2017年01月30日

【レオ】「仏教の思想1 知恵と慈悲<ブッダ>」を読んでみる その2

ブッダの説いたことは、どちらかというと、個人の確立のほうに重点があります。それが、個人の問題に片寄っているということははっきり言わなければならんと思うのです。そうすると、もう一つの人間関係、つまり、大衆との問題の側には比重がおかれていないのです。そこに大きな問題があるということに気づいたのが、大乗の生まれ出でのいちばん大きなファクターだったとわたし思うのです。



つまるところ、大乗というのはブッダの思想に対するアンティテーゼだと思うのです。大乗には、ブッダで強調された逆の面が出てきているのであって、ある意味において対立している。しかし対立をするということは、けっきょく、この思想を完全にするために補われるべきものを主張しているのです。

 
これも、ブッダのオリジナルの教えは、小乗仏典の方である、という先入観が最初からあって、それへのアンチテーゼとしての大乗運動が後に起こったのだ、という決めつけがありますが、
ブッダが在世時から、在家の人たちにも教えを説いていたのは、既存の仏伝でも知られていることのはずですよ。在家信者には、在家向けの教えを説き、三帰五戒の誓いを立てるシステムもすでにあったはずですね。

プロとしての出家集団があり、そちらの人たちの方が一層本格的な修行をしていたとは言っても、在家に対してブッダが比重を少なくしか置いていなかった、と決めつけるのは早計でしょう。

渡辺照宏さんなどは、既存の仏教知識だけから推理して、ブッダ在世時からすでに、大乗の萌芽となる教えを仏陀が説いていたのは明らかだ、と述べていますしね。

弟子を各地に派遣したのも、その現れであり、出家者を作るだけが目的ではなかった。多くの人を救済しようという、のちの大乗につながる思いを仏陀はすでに持っていて、実際に多くの人たちを救っていた。

ブッダのそもそもの教えに、大衆救済という目的がすでにあったのであって、のちの大乗運動は、その萌芽をさらに発展させたものであって、ゆえに大乗運動と仏陀は別物ではない。そう論じていたと思います。わかる人にはわかる、わからない人にはわからない、ということなのでしょう。

 

しかるにこの対談の学者さんたちは、渡辺照宏さんとは違い、ブッダの教えは個人の確立の教えであって、大乗運動はこれに対するアンチテーゼ、対極にある思想だった、と決めつけている。

そういう解釈に立って、のちの大乗運動を意義のある運動だと評価するのならば、それを説かなかったとされる仏陀への評価は相対的に下げられてしまって、ブッダへの尊崇の念さえ薄れかねませんが、実際この人たちのスタンスは、まさにこれに近いでしょう。

 


梅原 仏教というものは、釈迦に始まる一つの大きな思想の流れという形で見ていったほうがよい。釈迦の仕事もひじょうにすぐれている。しかしその後に出てきた大乗仏教、浄土教なら浄土教も、それぞれ実にみごとな生と死の問題の解決のしかたを示している。



増谷 そのとおりです。

 

仏教を始めた釈迦はたしかに偉いが、歴史の流れの中で、そこに後から出てきた大乗の教え、浄土教の教えやその他のさまざまな流派が付け加わったお蔭で、いっそう仏教は素晴らしいものになったと、梅原氏は言っている。増谷氏もそれに同調していますが。

これでは、釈迦は単に、最初に仏教という教えを始めた、点火した人間に過ぎず、マッチで火を付けただけの人にさえなってしまいかねません。

釈迦がつけた小さな火が、やがてたくさんの薪がくべられて、大きな火となって燃え上がっていった、それが仏教である、と言わんばかりの解釈ですが。

これでは、仏教とは釈迦である、仏教を知るためには釈迦に帰れ、などという視点が出てくるわけもありません。

釈迦の教えには、浄土教もまだ無く、大乗の教えもまだなく、ただ個人の確立を説いただけの教えという理解しか、この人たちはしていないんですから。

 

釈迦だけを追求しても仏教はわからないと言っているわけです。

さきほどは、仏教を知るためには、六師外道をさらに調べるべきだと言ってみたり、今度は、釈迦だけを調べても仏教はわからないなんて言っている。これで、よく仏教を語れたものだと呆れてしまいます。
 
増谷 ええ、そうなのです。仏教学者の中にも、たとえば原始仏教を研究し、それをプロトタイプにして、のちの諸流を考えようとするものもある。するとたとえば、浄土教はその原型にはまらないので、それはほんとうの仏教ではないとする。そのような考え方もある。  ところが、仏教というのは、滔々たる流れだと思うんです。水源すなわち、ブッダから流れ出た流れは、やがて、いろんな水流を合わせて滔々たる流れとなった。それによって、仏教は混濁したのじゃなくて、一歩一歩完成に近づいているのだと思うんです。

 
渡辺照宏さんは、仏教を知るためには、仏陀に帰らないといけない。仏陀を知ることが、仏教を知ることなのだ、と明確に生前から述べていました。

ここで増谷氏が批判している仏教学者というのは、ゆえにこの渡辺照宏さんのことだと思われます。どちらの見解が正しいのでしょうかね?(笑)

 

渡辺照宏さんの著書を読めばわかりますが、仏陀在世時の教えがどのようなものであったのかを追求し、その観点から、のちの中国仏教や、日本の平安・鎌倉仏教の各宗派を論じていますからね。

浄土宗や日蓮の教えは、本来の釈尊の教えからしたら、きわめて異端の教えといっていい距離のある考え方だ、と明確に指摘しています。

しかしこの増谷氏は、仏陀+中観+唯識+密教+禅+浄土系+日本の仏教+ … といった形で、仏陀のオリジナルに、その後いろんな別の考えがたくさん付け加わったのが仏教なのだ。釈迦にいろんなものがさらに流れ込んで大きな大河にあったのが仏教なのだ、などと言っているわけです。

 
梅原 そうですね。仏教は異端の勝った歴史ですね。(笑)



増谷 少なくとも、異端がひじょうに大きな役割をしています。そのことを明らかにしておかないと、ブッダでもって仏教の思想のすべてを律しても律しきれないのです。わたしはそういう考え方をもっています。



梅原 そのことはわたくしも賛成です。仏教というものを、釈迦から始まる思想の流れとしてそこにいろいろの思想が流れ込んで堂々たる流れになった思想の大系というふうに考える。

 

仏教は、キリスト教とは違って、寛容な教えであったがゆえに、そこに本来の釈迦の教えとは違った異色の考えが、後世どんどん付け加わっていきましたね。

寛容さはよいことでしょう。けれども、そうして付け加わったことを、単なるプラスと見て、その反対に、仏陀その人を小さく小さく見ていったならば、仏陀に帰れという視点は決して出てこないでしょう。仏陀の偉さが矮小化されてしまうし、こういう人たちにとって、仏陀とはどういう存在になるのだろうか。

仏陀が再誕されたといっても、いや別に仏陀が仏教のすべてを説いたわけではないし … などと言いかねないのではないでしょうか。

そういう、仏陀への尊崇の念の薄さが、この人たちの信仰心の薄さをも表しているのではないでしょうか。

中村元という人は、自分こそが仏陀の再誕であるみたいなことを言って、地獄の暗闇の中から霊言を送っていたようですけれどね。さもありなん、というところでしょう。
 
増谷 ドイツのオルデンベルグという仏教学者は、仏教をよく理解し、とくにブッダをひじょうによく理解していたと思うんですが、彼は、ブッダが死後の生命を語るでもなく、天国に生まれることを語るでもなく、片田舎で静かに死んでいったということにいちばんの感銘を示しています。



梅原 ソクラテスですら、最後は不死を語った。彼は一生ロゴスの人で通しながら、最後にミトス、神話を語ったわけです。最後にイデアの世界を証明して、これから行く世界は、どんな世界かということを想像しているわけです。ヨーロッパの合理主義の中には、ひじょうに非合理なものがはいってるんだなぁ。

 
この人たちが、死後の世界のことなど信じていないのが、上の発言を読めばよくわかるでしょう。
 

ソクラテスは、死の直前の弟子との対談で(「パイドン」)、肉体が滅びて、魂となってから帰る世界のことが、わたしは楽しみで仕方がない、と述べているんですが、

この対話を指して、梅原氏は「神話」と述べています。ソクラテスは死後の世界を「想像」しているんだなぁ、なんて書いていますが、「パイドン」や「国家」を読めば、ソクラテスは想像していたんじゃなくて、霊界の実相を明確に知っていたんですよ。想像じゃなくて、実際に霊眼で見て知悉しており、その仕組みを明確に理解・認識して語っていたんですよね。

神話や想像などという言葉を使って、絵空事をソクラテスが妄想していたかのように言うのは、ソクラテスやプラトンに失礼というものです。

 

この梅原猛という人は、怨霊史観を立てて知られていますが、この人を尊敬して怨霊史観を中心に据えている人が、井沢元彦ですね。この人もダメだな、とわたしは推定していますが、この人の歴史観は偏屈でかたよっている、と「逆説の日本史」を読むと感じます。

 

思想の系譜というか、誰の教えの流れを汲んでいるのか、どういう解釈をこの人は採っているのか。そういう点をよくよく見て、読む本は選ばないといけませんね。

 

 … つづく。

 

仏教の思想2、か、仏教の思想3、の感想も書きます。

 

 



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posted by ガンレオ at 10:49 | Comment(0) | レオブログより | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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